Teeth (ティース) [B級映画]
前回に引き続き今回も
味のあるB級映画を紹介させて戴きます。
今回紹介する映画のタイトルは【Teeth (ティース)】
(teethとはtooth(歯)の複数形)
始めに、どういう物語なのかを簡単にご説明しますが、
この映画、ストーリー設定を一見する限りは
下品なだけの下ネタ系B級ホラーと誤解されそうな
いわゆる、イロモノ系に分類される作品だったりします。
性的で、尚且つグロテスクな表現も含んでいますので
恐らく、設定を見ただけで
嫌悪感を示す方もいらっしゃるかと思いますが、
それを差し置いても、
かなり個性的で完成度の高い映画でしたので
敢えて、ブログの方で採り上げさせて戴きました。
設定が持つバカそうな印象とは異なり、
実際は知的な映像的比喩が張り巡らされた
中身の濃い作品だったりします。
根底にあるテーマは、まさに「人類と性の知覚」。
太古の昔より、国境や文化を越えて受け継がれてきた
人類の「性」という概念への
細胞に刻み込まれた無意識下に置ける
「畏敬の念」そのものなのではないかと自分は感じました。
・・・ちょっと褒め過ぎたかなw
------------【大雑把なストーリー説明】------------
ケンタッキー州のルイヴィルという街に
ドーンという一人の少女がいました。
一見すると、一般的な女の子と何ら変らない
ごくごく普通の少女なのですが、
実は彼女には、
人には言えない身体的な特徴がありました。
何と彼女の陰部には
無数の歯が生えていたのです。
時が経ち、少女は思春期を迎えるのですが、
その事に関するコンプレックスから
性に対して極端に消極的な性格になってしまいます。
(興味が無い訳ではない)
その事を誤魔化し、
自らの立ち位置を周りの人間に示す為なのか、
彼女は現地にある貞操グループへとその身を置き、
(恐らく、性に対して極端な認識を持つ原理主義的なカトリック系の団体)
本能的に湧き上がる異性への興味を
必死に否定しながら日々を過ごしてきました。
しかし、そんな彼女にも
淡い初恋が訪れる事となります。
その初恋の相手は、同じ貞操クラブに所属する青年。
2人は、貞操クラブで叩き込まれた
性に関する罪の意識と葛藤しながらも
やがて惹かれ合い、恋愛関係となります。
・・・しかし、この事が切っ掛けとなり
彼女の平穏な日常は狂い始めてゆくのでした。。。
------------【以上。。。】------------
まぁ、この説明だけ見ると
中身の薄そうなバカ映画という印象を受けるかも知れませんが、
(まぁ、その認識の半分は正解ですがw)
実はこの女性器に歯が生えるという設定は
ネイティブ・アメリカンの伝承を元に作られたものなのだそうです。
意外な事に、こういう作品に手厳しい筈の批評家たちからも
かなりの高評価を受けたそうですよ。。。
http://cinematoday.jp/page/N0012462
興味深い事に、
女性器に「歯」というイメージは
彼らネイティブ・アメリカンだけに伝わるものではなく、
世界中の、文化も宗教も違う
多くの土地の伝承の中に登場するイメージだったりします。
民族・文化・宗教を超えて知覚されてきた
まさに人類全てを繋ぐ無意識下のイメージ。。。
この話だけで、
知的好奇心をくすぐられませんか?
この映画のストーリー中、主人公の少女ドーンが
自らの性器が周りの一般的な女性と異なることに気が付き、
その事実と向き合う中で、
「vagina dentata」(歯のある膣)というワードに行き着きます。
この映画を読み解く上で重要な「vagina dentata」について
心理学や神話・文化等、様々な話を雑じえながら
人類学的な視野から解説されているサイト様を発見致しましたので
下記にそのURLを貼って置きます。
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/tiakio/antiGM/vagina.html
ここに書かれている様な無駄知識が在れば、
恐らく、この映画をより深く楽しむことが出来る筈ですw
因みに、日本神話においては
「イザナミ」の存在や逸話がこのイメージと符合してきますし、
もっと土着的な民間信仰の例を挙げれば、
日本に置ける性器崇拝の代表的な神、「金精大明神」の逸話の中に
女陰に歯が生えた女帝の話があったりと、
驚くほどの附合点を見出すことが出来ます。。。
興味のある方は、
他国の神話や伝承についても調べてみることをお勧めします。
地域・民族・宗教を問わず、
気持悪いくらいにこのイメージを連想させる
逸話がある事に気付く筈です。
人間、生まれては
その生涯を終え、死んでゆく。
人の命を生み出す事が出来る、
女性への畏敬から生まれたとされるシンボルが
神話等に置ける「地母神」。
こういう、生と死というものに関わるイメージは
あらゆる文化的な垣根を越えて
人類共通って事なんでしょうかね?w
・・・と、前置きが長くなってしまいましたが
興味を持たれた方は
実際にこの作品をご覧になって
映像の醸し出す雰囲気を味わってみて下さい。
・・・某所に動画が上がっていたので
興味のある方はこっそりとどうぞ。。。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm6336075
もし、気に入ったら監督や役者さんの為にも
是非ともDVDを購入してあげて下さいね。
・・・とは言ったものの、
この作品は日本で劇場未公開の作品の上に
まだ日本版のDVDも発売されていないので、
今現在入手するとしたら、輸入版のみとなってしまうんですよね。
しかも、その輸入版を調べてみたら
リージョンコード1のみの対応だったり、
対応字幕がスペイン語だけだったりと酷い有様・・・^^;
因みに、日本の標準的なDVD再生機器は
リージョン2対応なので
この輸入版を買っても再生出来ません。
これをうpした人は
どこで日本語字幕版を手に入れたんだろう?w
もしも今後、日本版DVDが発売される様でしたら
当ブログで改めて告知させて戴きますね^^
それにしてもこの少女、
今後どの様な人生を送る事になるのだろうか?
彼女もこんな特殊な身体に生まれなければ
普通の恋愛をし、普通の人生を過ごしていただろうに・・・。
(兄貴やトビーを始めとする、彼女と関わった人達もねw)
ストーリー中では一切触れられてなかったけど、
こういう特殊な体に生まれてしまった原因は
ストーリーの冒頭から最後までさり気なく映されている
あのいかにもという感じの「煙突」が象徴している様に感じました。
物語終盤のマザー(犬の名前)の行動も
上記に貼ったリンク先を読んでいれば
ちゃんと意味があるものだと理解できますw
「口」mouthは「母」motherと同じ語源から派生した。という件ねw
ラストは、彼女が男性という存在に対して
不信感や憎しみを募らせながらストーリーが閉幕、と
まるっきり救いが無い終わり方にも思えますが
彼女が好意を持ち、
尚且つ、むりやりではなく同意の上という条件下でなら
普通に性交が出来たという事を思い出してください。
ストーリー中にちゃんと、今後の彼女の人生に
希望を見出せる表現も残されていましたね。
-----------------------------------------
歯の生えた女性器の伝説は、世界中の色んな神話に見られる
これらの物語はいつも同じでヒーローが女と対決する
そして、歯の怪物は力を失う。
本編の字幕文章より引用。。。
------------------------------------------
彼女がその後の人生において
最良のパートナーと出会えた事を祈るばかりです。。。
味のあるB級映画を紹介させて戴きます。
今回紹介する映画のタイトルは【Teeth (ティース)】
(teethとはtooth(歯)の複数形)
始めに、どういう物語なのかを簡単にご説明しますが、
この映画、ストーリー設定を一見する限りは
下品なだけの下ネタ系B級ホラーと誤解されそうな
いわゆる、イロモノ系に分類される作品だったりします。
性的で、尚且つグロテスクな表現も含んでいますので
恐らく、設定を見ただけで
嫌悪感を示す方もいらっしゃるかと思いますが、
それを差し置いても、
かなり個性的で完成度の高い映画でしたので
敢えて、ブログの方で採り上げさせて戴きました。
設定が持つバカそうな印象とは異なり、
実際は知的な映像的比喩が張り巡らされた
中身の濃い作品だったりします。
根底にあるテーマは、まさに「人類と性の知覚」。
太古の昔より、国境や文化を越えて受け継がれてきた
人類の「性」という概念への
細胞に刻み込まれた無意識下に置ける
「畏敬の念」そのものなのではないかと自分は感じました。
・・・ちょっと褒め過ぎたかなw
------------【大雑把なストーリー説明】------------
ケンタッキー州のルイヴィルという街に
ドーンという一人の少女がいました。
一見すると、一般的な女の子と何ら変らない
ごくごく普通の少女なのですが、
実は彼女には、
人には言えない身体的な特徴がありました。
何と彼女の陰部には
無数の歯が生えていたのです。
時が経ち、少女は思春期を迎えるのですが、
その事に関するコンプレックスから
性に対して極端に消極的な性格になってしまいます。
(興味が無い訳ではない)
その事を誤魔化し、
自らの立ち位置を周りの人間に示す為なのか、
彼女は現地にある貞操グループへとその身を置き、
(恐らく、性に対して極端な認識を持つ原理主義的なカトリック系の団体)
本能的に湧き上がる異性への興味を
必死に否定しながら日々を過ごしてきました。
しかし、そんな彼女にも
淡い初恋が訪れる事となります。
その初恋の相手は、同じ貞操クラブに所属する青年。
2人は、貞操クラブで叩き込まれた
性に関する罪の意識と葛藤しながらも
やがて惹かれ合い、恋愛関係となります。
・・・しかし、この事が切っ掛けとなり
彼女の平穏な日常は狂い始めてゆくのでした。。。
------------【以上。。。】------------
まぁ、この説明だけ見ると
中身の薄そうなバカ映画という印象を受けるかも知れませんが、
(まぁ、その認識の半分は正解ですがw)
実はこの女性器に歯が生えるという設定は
ネイティブ・アメリカンの伝承を元に作られたものなのだそうです。
意外な事に、こういう作品に手厳しい筈の批評家たちからも
かなりの高評価を受けたそうですよ。。。
http://cinematoday.jp/page/N0012462
興味深い事に、
女性器に「歯」というイメージは
彼らネイティブ・アメリカンだけに伝わるものではなく、
世界中の、文化も宗教も違う
多くの土地の伝承の中に登場するイメージだったりします。
民族・文化・宗教を超えて知覚されてきた
まさに人類全てを繋ぐ無意識下のイメージ。。。
この話だけで、
知的好奇心をくすぐられませんか?
この映画のストーリー中、主人公の少女ドーンが
自らの性器が周りの一般的な女性と異なることに気が付き、
その事実と向き合う中で、
「vagina dentata」(歯のある膣)というワードに行き着きます。
この映画を読み解く上で重要な「vagina dentata」について
心理学や神話・文化等、様々な話を雑じえながら
人類学的な視野から解説されているサイト様を発見致しましたので
下記にそのURLを貼って置きます。
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/tiakio/antiGM/vagina.html
ここに書かれている様な無駄知識が在れば、
恐らく、この映画をより深く楽しむことが出来る筈ですw
因みに、日本神話においては
「イザナミ」の存在や逸話がこのイメージと符合してきますし、
もっと土着的な民間信仰の例を挙げれば、
日本に置ける性器崇拝の代表的な神、「金精大明神」の逸話の中に
女陰に歯が生えた女帝の話があったりと、
驚くほどの附合点を見出すことが出来ます。。。
興味のある方は、
他国の神話や伝承についても調べてみることをお勧めします。
地域・民族・宗教を問わず、
気持悪いくらいにこのイメージを連想させる
逸話がある事に気付く筈です。
人間、生まれては
その生涯を終え、死んでゆく。
人の命を生み出す事が出来る、
女性への畏敬から生まれたとされるシンボルが
神話等に置ける「地母神」。
こういう、生と死というものに関わるイメージは
あらゆる文化的な垣根を越えて
人類共通って事なんでしょうかね?w
・・・と、前置きが長くなってしまいましたが
興味を持たれた方は
実際にこの作品をご覧になって
映像の醸し出す雰囲気を味わってみて下さい。
・・・某所に動画が上がっていたので
興味のある方はこっそりとどうぞ。。。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm6336075
もし、気に入ったら監督や役者さんの為にも
是非ともDVDを購入してあげて下さいね。
・・・とは言ったものの、
この作品は日本で劇場未公開の作品の上に
まだ日本版のDVDも発売されていないので、
今現在入手するとしたら、輸入版のみとなってしまうんですよね。
しかも、その輸入版を調べてみたら
リージョンコード1のみの対応だったり、
対応字幕がスペイン語だけだったりと酷い有様・・・^^;
因みに、日本の標準的なDVD再生機器は
リージョン2対応なので
この輸入版を買っても再生出来ません。
これをうpした人は
どこで日本語字幕版を手に入れたんだろう?w
もしも今後、日本版DVDが発売される様でしたら
当ブログで改めて告知させて戴きますね^^
それにしてもこの少女、
今後どの様な人生を送る事になるのだろうか?
彼女もこんな特殊な身体に生まれなければ
普通の恋愛をし、普通の人生を過ごしていただろうに・・・。
(兄貴やトビーを始めとする、彼女と関わった人達もねw)
ストーリー中では一切触れられてなかったけど、
こういう特殊な体に生まれてしまった原因は
ストーリーの冒頭から最後までさり気なく映されている
あのいかにもという感じの「煙突」が象徴している様に感じました。
物語終盤のマザー(犬の名前)の行動も
上記に貼ったリンク先を読んでいれば
ちゃんと意味があるものだと理解できますw
「口」mouthは「母」motherと同じ語源から派生した。という件ねw
ラストは、彼女が男性という存在に対して
不信感や憎しみを募らせながらストーリーが閉幕、と
まるっきり救いが無い終わり方にも思えますが
彼女が好意を持ち、
尚且つ、むりやりではなく同意の上という条件下でなら
普通に性交が出来たという事を思い出してください。
ストーリー中にちゃんと、今後の彼女の人生に
希望を見出せる表現も残されていましたね。
-----------------------------------------
歯の生えた女性器の伝説は、世界中の色んな神話に見られる
これらの物語はいつも同じでヒーローが女と対決する
そして、歯の怪物は力を失う。
本編の字幕文章より引用。。。
------------------------------------------
彼女がその後の人生において
最良のパートナーと出会えた事を祈るばかりです。。。
はじめまして、こんにちは。
この映画の動画を見つけて興味を持ち、どんな映画なんだろうと情報収集をしていたところ、こちらの記事に辿り着きました。
大変、真面目に考察されていてなるほどなと感心しています。
あらすじだけ聞いていると、なるほどいかにもB級っぽいな…と言う感じですが、観てみると安っぽくなく確かにきちんと真面目に制作されている映画でしたね。途中、ギャグなのかホラーなのか分からなくなる部分も多かったですが(まぁ、ホラーとコメディはもともと表裏一体ですよね)脚本も良かったし、何より俳優さんたちの演技がとても良く、最後まで楽しめました。
それにしても、日本語版DVDも出ていないし未公開なんて、もったいないですね。しょうもない内容のホラーがごまんと輸入され、ビデオショップに並んでいる中でも、かなり面白い部類に入るのに…。
あ、あと、主演の女の子がすごく可愛かったです^^
オーバー気味の演技もいちいち笑えて良かった(微笑ましかった)ですね。
最後になりましたが、しめらみさんの解説がなかったら、最後まで観てなかったかも…。有難うございます。
他のレビューもぜひ、映画選びの参考にさせてもらいたいと思います。
by natsuki (2009-05-13 16:12)
>>natsukiさん
初めまして!コメントどうも有り難う御座います^^
まず、最初に
この度は長期間のブログ放置によって
返信が長い間滞ってしまい、本当に申し訳ありませんでした。
これだけ放置してしまったら
もう、この文章を見ていらっしゃらないかも知れませんが、
コメントを戴けるのはブログを書く上で、
大変励みになりますし、自分にとって良い刺激になります。
これからまた徐々に更新を再開していけたらと思っていますので
また気が向いたときにでも覗きにきて下されば嬉しいです。
この映画は自分も最初は
単なるB級映画かな?位にしか思っていなかったんですが
視聴後は、B級っぽい中にも
非常に計算された知的な要素も見え隠れしていて
なかなか味わい概のある、スルメの様な作品だなと感じましたw
ホラーと笑いは表裏一体という事は
自分はB級ホラー映画を見てるうちに
無意識に感じる様になっていたのですが、
恐怖とは対称にあるジャンルの、「お笑い」に携わる
ダウンタウンの松本人志さんもお笑いサイドの視線で
似た様な発言されていて、驚いた覚えがありますw
日本未公開は本当に勿体無いですよね!
映画というものは世界各地を見渡してみると、
それこそ毎年、星の数ほど(これは言い過ぎですねw)
制作されている訳ですが、
一般の人が目にするタイトルは配給会社が選定した
その中の極々一部だけ・・・。
日本では聞く事の無い様な無名作品でも、
中身の濃い良作はまだまだ存在しているんでしょうね。
主演の子はほんと、綺麗でしたよね^^
日本では名前の聞かない女優さんでしたけど
個人的に有名女優や役者さんより
こういう無名だけど頑張っている人の演技は大好きです。
人間臭い、良い演技をされる女優さんなので
もっと評価されて欲しいですね~!
最後になりますが
こちらこそ丁寧な感想を下さり有り難う御座いました^^
そして、重ね重ねになりますが
返信が半年近くも遅れてしまって申し訳ありませんでした(>_<)
マイナーなものに関する記事が殆どの
方向性不明なブログですけど
また機会があれば気軽にコメントしていって下さいね^^
by しめらみ (2009-10-04 17:02)